”2つの”スーツを纏った闘う紳士たち。その異色で魅惑的な彼らのイラストを手掛ける絵師が誕生した。
今年2024年に活動を開始したイラストレーターの”区切り島（くぎりしま）”。スーツとパワードスーツという組み合わせで、スタイリッシュなキャラクターのイラストを描いているのだ。
画法はアニメ塗りがベースとなっていて、光のグロー描写が特徴的。しかも彼の描くイラストの服装からは、”ニッチな”こだわりが見て取れる。そう、キャラクターたちのトレードマークとなるスーツだ。
冒頭の絵のキャラクターのスーツはピークドラペルと呼ばれる、ジャケットの襟の角が上向きに伸びている方式のもので、日本では少々珍しい様式だ。さらにシャツは淡いブルーにボタンダウン、袖にはカフスがチラリと覗く。ネクタイにはピンを携え、まさに紳士といった出で立ちだ。
そんな人物がの右腕を見過ごすわけにはいかない。なんとそこには鈍重な金属のパワードスーツが。細かなエッジラインの各所からは電光が漏れ、異彩を放ちながらも絶妙にマッチしたその姿からは、マーベル作品の「アイアンマン」やアニメシリーズ「PSYCHO-PASS（サイコパス）」のドミネーターを彷彿とさせる。現にイラスト作者のギリシマはそれらに影響を受け、こんな組み合わせを描き出しのだとか。
他の作品のキャラクターにも同様のこだわりが散見する。
女性キャラクター（画像左）の手足のマシンは、いままさに装着途中といったところだろうか。各部が展開し、端子のようなものも見える。右足のマシンの踵部分を人差し指で引くその様はさながら、ハイヒールを直す淑女の姿だ。
珍しい緑のスーツを纏ったブロンド髪の青年（画像右）は、こちらもジャケットはピークドラペル。シャツとタイはベーシックなフォルムながら黒とベージュと配色がまた絶妙だ。右の袖から覗くカフスも造形が凝られている。また、靴は2ベルト式のモンクストラップで、個性的だがまとまりが良い。そして隠密作戦と称された本作で、青年のマシンは腕時計ともとれる個体と指先だけというこぢんまりとした構造。これもまたストーリー性を感じられる演出だ。
区切り島の作品に共通するのは、スーツのコーディネートが日本にとっては異色であることだ。
パーティースーツなどで見たことがある人もいるかもしれないが、「スーツ」といったらサラリーマンが着ている暗寒色でシンプルなもので、シャツは淡色、ほとんど白のワイシャツが思い浮かぶだろう。描かれているようなスーツの形は「オーダースーツで仕立てる特殊な趣味」という意識が強く日本では広く馴染みはないが、西洋では比較的日常で着られることも多い。背景もどことなく海外を連想させるため、そういった世界線の設定なのかもしれない。
そんな見慣れたものとは少しかけ離れた衣装とそこに鎮座する艶めかしい金属の堅牢。男女問わず大人のセクシーさを感じられるのではないだろうか。
さて、これらのイラストが投稿されているわけだが、世界観や設定はあるのだろうか。これだけ個性に絞った題材で描き続けているこれらの作品に一体どんなストーリーが隠されているのか。
区切り島によると、「スーツ×パワードスーツ」というビジュアルコンセプトが第一とのこと。副業趣味イラストレーターとして活動開始するにあたり、ひたすらに自分の好きなもの同士を、描いていて熱中できるものを追求しようと考えたそうだ。昔からアイアンマンが好きで、あのガチャガチャと細かい金属が動いてスタイリッシュなアーマーになるのが好きで、特に主人公トニースタークが度々行う、パーティースーツのままパワードスーツを装着して戦闘に入るというシーンにはロマンを感じざるを得ないのだとか。
では一切合切ストーリーや設定はないのかというと、そうでもないらしい。詳しく語れない部分も多いが、現状伝えられるところを「ふわっと」紹介する。
”今とは違う時代、何者か（後々登場予定）と戦う組織のメンバーたちが作品のキャラクター。その組織は社会の平和を守る職務で、パワードスーツが武装として支給されている。制服としてスーツを纏い、社会を統べる者としてふさわしい振る舞いを求められている。”
それを知ると、なんとなく服装やアクセサリーに共通性がみえてきたり、冒頭のイラストの右下端に何か禍々しい手のようなものにも気づく。今後はイラストに加え短いマンガの投稿も予定しているとのことで、ストーリーも少しずつ明らかになっていくのだろうか。区切り島の作品投稿から目が離せない。
区切り島
スーツが大好きなイラストレーター。
スーツ×パワードスーツのオリジナルキャラクター
のイラストをよく描く。スタイリッシュな稜線と、
キャラクターの個性を魅力としている。
CreatiPRの公式キャラクター「羽広わたげ」のイラストも担当。
